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ギリギリセーフの父島・母島行(シリーズ2)

大自然に抱かれて観察力に集中(2/4)

 陸の自然をザッと探訪、海の自然を満喫で父島に上陸後、早くも3日目は、昨日海から全容を見た千尋岩(ハートロック)への終日ハイク、陸の自然をじっくり観察予定。出発後、まずはチョット寄り道、車道の終点小浜海岸へ。ここは一昨日行ったコペペ海岸から峠越えで出られる場所だが、車で直行。島では貴重な、素足で泳げる海岸だ。海岸に向う歩道で、ハイビスカスの仲間で日中は黄色、夕方には赤く変色するオオハマボーの黄色い花が歓迎ムードで私たちを見下ろし、足元には落花した赤い花の絨毯が迎えてくれた。小港海岸は、広々とした砂浜と定期的に打ち寄せる波の音、その先にある澄んだ水色の海、どれを取ってもコペペ海岸の荒々しさとは対照的だった。ガイドの島田さんが、眼前の中山峠は背後に南島があり、尾根からの眺望がダイナミックだと力説。実は計画段階ではこの尾根を歩こうと考えていたが、旅行社の勧めで千尋岩ハイクに決定した経緯と、昨日海から飽きる程見たハートロックへの陸路は、森の中で展望が効かない等から、多数決で中山峠から袋岬へ行先変更。
 一旦車に戻り、装備を整え峠へ向う。登行中、木々の間に小港海岸がだんだん下方へと遠のく。尾根上へ登る手前で、オガサワラトンボ、オガサワラゼミ、オガサワラシジミ(蝶)等を食べつくしたとされるイグアナ科のトカゲ、グリーンアノール発見。外来種であるこのトカゲの被害を食い止めるべく、フェンスや粘着トラップを使用し、固有種を守る事業も行われている、等の説明を聞く。一方、中山峠の展望台にあるベンチでは、帰りに固有種のオガサワラトカゲも見る事が出来た。尾根上から見る景色は、尾根下の植生が上から見渡せる。海岸周辺で見上げたオオハマボーの花を一回り小さくしたテリハハマボウ(別名モンテンボク)の花も手に取るように観察出来た。
 午後は東平で次々固有種の植生や、ヘゴ、メヘゴ、マルハチ等シダ類の特徴を観察し、どこからどうやってこの海洋島へ来たのか、アメンボまで見た。夕刻はウェザーステーション展望台から沈む夕日を眺め、その足でこの島では唯一の哺乳類固有種であるオガサワラオオコウモリを間近で観察。キッキッと声を出し、バナナの葉を無我夢中で食べる彼らは、丸々とした体とその動き、こちらを見る時のクリッとした目に愛嬌があった。彼らは、超音波ではなく視力を使って行動する。だから遥か彼方の地から大海原を飛んで来られたのだろうと想像がつく。
 中山峠の尾根道は、上から見下ろせるタコの木の群生する斜面や、両サイドの海岸線の造形、その先に広がる海原に突き出した島々等、高見の見物が出来る豊富な自然造形美観察の道。東平はタコズルはじめ固有種の宝庫。しかし、国内外での自然観察時に見られる生態系の多様性が持つ、相互の関連性は見られない。ノネコ、ノヤギ、ネズミ、アカギ、リュウキュウマツその他人間が持ち込み野生化した外来種の影響で寸断された生態系は、まだ回復又は再編成出来てはおらず、個々それぞれが必死で、自らの命のみを繋ぎとめているように見える。この脆弱な自然が連携し、お互いを保管する連鎖が確立するまでには、千年万年の時を必要とするだろう。この島では観察の妙は充分楽しめたが、食物連鎖も含め、連携連鎖を持つ自然界のしたたかさやパワーはもらえなかった気がするのは私だけだろうか。
( 写真のコメント)
28:オオハマボー(カイガンイチビ)アオイ科 29:一日で黄色から赤に変わり散るオオハマボーの花
30:素足で泳げる小港海岸 31:森林生態系保護地域の入口では靴、ズボン等を洗浄し調査用小石を缶に入れる
32:中山峠登行中のぞき見る小港海岸 33:中山峠からの小港海岸(右)とコペペ海岸(左)
34:ブタ海岸への分枝から望むコペペ海岸(尾根の右手) 35:袋岬へ向う尾根から望むブタ海岸と南島
36:外来種のトカゲグリーンアノール(イグアナ科)
37:ベンチを根城にする固有種のオガサワラトカゲ(トカゲ科)
38:計7匹のオガサワラトカゲが出たり入ったり 39:袋岬から戻る
40:海岸林のオオハマボーとは異なり、山里、山上に生息するテリハハマボー“アオイ科の固有種”
41:ムニンアオガンピ ジンチョウゲ科 春と秋に花が咲く。固有種 42:ヒメツバキ(ツバキ科)固有種
43:ウラジロコムラサキ クマツヅラ科 固有種 44:マルハチ(ヘゴ科)
45:逆さにすると八の字に見える幹の模様 46:タコヅルの幼樹 47:タコヅル タコノキ科 固有種
48:アメンボ 49:ウェザーステーション展望台からの夕日
50:どこかに居ます-オガサワラオオコウモリ
 
(パソコンによってダウンロードに時間がかかることがあります)

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